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「リント…さん…?」
シェリルが不安げにリントを見やった。リントは頭を振って、席に着いた。横顔から伺い知れる顔色は思わしくなかった。強く閉じられた瞼によって、眉間に皺が寄る。
リントを気にせず、アインは続けた。どこか機械的だ。
「生徒会の動向を見ながら、シルク達と合流してもらいます。」
「いつごろを見込んでいるの?」
「サンドハーストは基本的に外部の人間の出入りが乏しい。迂闊に外部から入る事は危険です。すぐにマークされますから。
だけど外部の人間の出入りが不自然にならない時があります。二カ月後のフィエスタです。サンドハーストの、フィエスタ。」
NOISE編集室が再び静かなざわめきに埋め尽くされる。
サンドハーストのフィエスタは秋頃に生徒会が開催する学園祭だ。この時はサンドハーストが一般に開放され、多数の人間が来場する。生徒の家族、卒業生、観光客から視察名義でユニオンの関係者が来るなど来場者の層は厚い。
「なるほど、いいタイミングね。」
「シルクはフィエスタを切欠にレイル・コンスタンティノーブルは何か行動を起こす算段を立てていると考えています。フィエスタにはユニオン関係者も来場するし、何よりフィエスタは…」
「アドレフォレストがあった日。よく知ってる。その日の重みを、価値を。」
ヲリエの言葉に憂いが混じる。ヲリエの世代には思う事が多すぎる日だろう。
「レイルが何かやるならその日だろうね。」
「だけど確証が無い。」
アインが指摘する。続きは云わない。だがアインの目を見るだけでヲリエは理解した。
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