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「そうね。アインを信頼する確証が欲しいな。」
ヲリエも頷いた。
アインは深く息を吐いた。答えを出す唇が微かに震えている。答えをせき止める堰が喉元に居座っているのだろうか。躊躇いと戦いながらも、彼女は懸命に答えようともがいているようだ。
ヲリエやシルトは顔を見合わせる。シルトが眼を閉じて首を振った。追及はしないで一先ずアインの返答を待とうと云う素振りだ。ヲリエは了解を目で送り、アインに向き直った。
アインはゆっくり唇を開いた。
「私は、シルクの近親者では無いです。」
まず一言。
アインは丁寧に言葉を連ねていく。
躊躇いのベールをゆっくり脱いでいくように。
「アイリスの名前はシルクがくれました。アインと云う名前も。」
「名前も?」
まるで親子だ。
名前を授けるなんてそうある事じゃない。また、アインの語り口には温もりがあった。語る対象への温情が滲み出ている。
「あなたは、シルクの何?」
「私は…」
ヲリエの問いに答えようとして、アインは口を噤んだ。
また深呼吸。
質疑応答も不慣れなようだ。
そして意を決して、語り出す。
「約束の証です。約束を果たす為の存在なんです。」
「約束を果たす…?」
抽象的な云い回しだがヲリエはそこはかとない意味を察した。
目の前にいる小柄な少女がとてつもない使命を背負っている事を予感させる意味を。
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