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「約束、ね。覚えが無いんだけど。」
唐突に投げかけられた冷たい声音が雰囲気を一変させた。
全員の注目が編集室の入り口に移動する。
薄紫のセミロングの髪を靡かせる女が立っていた。女にしては高い背丈に、スレンダーなプロモーションが備わっている。赤銅色の瞳が光る顔は端正で整っていた。
冷たく、凛とした気高さを纏っている。
「フリ…」
「メイデンよ、四之宮ヲリエ。」
メイデン・メタルパレスは優雅に、冷酷に謳いながら歩み寄った。背後には三人の執行部員が控えている。四人の様子でメイデン達の目的は瞬時にヲリエ達に伝わった。
「…何の用?」
ヲリエは立ち上がり、メイデンに鋭く問う。
「あら、今更質す事?無駄が好きなのかしら。」
メイデンの口調は冷淡だ。一言一言、ありふれた言葉にさえ毒が潜んでいる。
「私とあなたの関係を見れば歴然でしょう?敵よ、何の飾りも無い敵。私とあなたが出会えば一悶着あるか、起こるかのどちらかでしょう?」
「だろうね。で、どんな一悶着があるのかな?」
メイデンはジロリとアインを見た。アインはメイデンを睨んでいる。アインからしたらレイルの側に付いている人間は敵に部類されるのだろう。
「曰わくありげな転校生が此処にいると云う事はちゃんと曰わくがありようね。」
「メイデン・メタルパレス…!」
「初対面の人に知られる程有名なつもりは無いけど。アイリスの名前を冠しているだけの人間なのかしら。」
「用は、彼女に?」
ヲリエがアインの前に立った。アインは目を丸くする。庇うようなヲリエの仕草がアインには驚きのようだ。
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