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同時刻、保健室。
惰眠で脳の髄まで麻痺したシオを覚醒させたのは端末の騒々しい音だった。
「んっ…。」
小さく呻いてシオは端末を手にする。手にしてもすぐに開かなかった。誰からの連絡か頭の中で推測する。
無駄な作業だ。
端末を開けばすぐ分かる事実をわざわざ手間暇掛けて推測する。徒な時間の浪費。だがシオが現実に立ち返るには必要な作業だった。
正直、誰かから連絡を貰うのは煩わしかった。
煩わしさを隅にやり、シオは推測する。
この端末はNOISEが支給した連絡用端末。NOISEのメンバーからの連絡と見るのが妥当だろう。
ヲリエ。
シルト。
リント。
エン。
ジャクリーン。
シェリル。
ラウル。
だがこの端末にはプライベートで付き合う人間の連絡先も入れている。尤も全寮制のサンドハーストにいる限りあまり電話やメールはしないが。
リク。
アレン。
エリス。
デイジー。
シャーロック。
ブリジット。
思い付く限りの名前を挙げた。まだ他にいるかもしれない。この端末に封じ込められた人間関係は複雑だ。シオの思いの寄らない域まで、それは複雑だ。
シオは推測を止めた。潔く端末を開く。
メールが届いていた。メーリングリストによる一斉送信。リントからだ。
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