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他愛ない業務連絡だろうか。
シオはちょっと肩透かしを食らった。
端末を開いて内容を確認する。
『編集室に近付くな。サンドハーストの変化を調べろ。』
簡潔な文だがどこか厳かさが伝わる。
編集室に近付くな。
この一文がやたら厳粛だ。編集室に敵対勢力が入ったのだろうか。だとしたら危機的な状況だ。
シオの思考にアクセルが掛かる。冷えたエンジンを暖めるように、ゆっくり熱を回していく。危機を察して体が準備を始める。殆ど条件反射だ。
だが、億劫な気分がまた舞い戻ってくる。惰眠は色濃くシオに根付いていた。
「でも、行かなきゃ…。」
シオはベッドから立ち上がった。シャツを直してゆっくり歩き出す。
保健室は静かだ。ペネロペはいないのだろう。患者がいない、または特に問題無い時、彼女はフラフラと出歩く事がある。それだけ奔放なのだ。
案の定、ベッドルームから出たら保健室は空だった。デスクにはカルテや筆記用具、煙草が放置されている。
シオは一瞥するだけで、そのまま立ち去ろうとした。
「やぁー。」
ドアの前に立ったシオが開く直前、ドアが開いた。
二人の生徒が立っている。
一人は天然パーマが特徴的な優男。軽薄そうな笑みを浮かべている。
もう一人は女。長身で長く、引き締まった脚が特徴的な女。凛とした美人だが髪や格好は無造作だ。
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