6.風雲逆巻く

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「我が身命の神髄は人の臨界に達する!容易く淘汰できると思うな!」 頭上のアルスは全く別の物体に跨っていた。一見はスレイプニルだが、前肢と後肢はそれぞれ二本ずつ変形し翼を形成している。背中に生えていた四本の足は後方に伸び、尾翼を担っている。ブースターはまんまジェットになっていた。アルスは上にサーフボードのように乗っている。 「飛行形態…?!」 目を見開くエドガーを尻目にアルスは誇らしげに胸を張る。 「我が眼下に群れる諸君に告ぐ!私はクレムフェン・アルス・ウォーデンクルフ!蒼天を疾駆する雷なり!我が雷鳴を聴いたなら畏れよ!我が雷火を見たなら恐れよ! 我と遇した者は、私が放つ雷撃を前に調伏されるものと知れ!」 「吹いてんじゃねぇぞ!」 額に青筋を立ててエドガーが怒鳴る。アルスの意識はエドガーを越えて、森林地帯にいる生徒会のメンバー全員に向けられている。眼前に対峙していながら等閑にされた事がエドガーには不愉快だった。 「俺を踏み越えてからぬかせボケェ!」 「御心配召されるな。貴方との相対を忘れた訳では無い。」 アルスはブロードソードを掲げ、大きく回した。ムーングラムで拡張された光の刃は綺麗な弧を描き、整った輪を作る。それが急速に広がり、行き先々に大量の光の杭が発生していく。 「何っ?!」 「私は臨界に達している。」 アルスはブロードソードの切っ先を天上に向けた。 「何人も我が域には入れぬ。」 青い瞳が瞬いた。燐光のように。 「ファイナルパニッシュメント。」 光の杭が一斉に、降り注ぐ。
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