6.風雲逆巻く

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リカルドが座する本営。 「空中からの爆撃?誰からだ。」 パソコンを前にリカルドは顎に右手を当てた。眼鏡のレンズの奥で涼やかな目が爛々と輝いた。 「アルスです。飛行可能な召喚体に乗った上から攻撃を。」 「標的は?」 「空中を旋回しながら無作為に広範囲攻撃を仕掛けています。」 ルーカの報告を聴きながらリカルドは右手の指を鳴らした。何回も何回も。 目はパソコンのディスプレイを凝視する。西のエドガー、北のアルフレッド、東の月虎、南のゼルクレスと黛。手勢はそれぞれ三十名は付けたが、アルスの奇襲で半数近くはやられたようだ。脱落者が続々と本営に運ばれている。 「単独で奇襲、それも賑々しい広範囲攻撃…。」 「陽動、ですか。」 ルーカが口を出す。云いたい事が多くてうずうずしていたのだろう。体を乗り出していた。 「アルスで気を引かせている内に、脱出を…」 「アルフレッドのみ先行させろ。他はアルスを無視して地上を探索させる。」 「アマデオ達の脱出経路は最初に突き崩したエドガーさんの部隊がいる西じゃ」 「ルーカ。」 強く、リカルドはルーカの台詞を断つ。 「お前の仕事は情報の収集であって憶測の発表じゃない。分を弁えろ。」 ルーカは口元を歪め、肩を落とした。情けなさばかり際立つ、侘びしい居住まいだった。
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