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同時刻、森林地帯中心付近。
「我が名を知れ!」
ブースターの轟音を奏で、風を切り、空を闊歩するアルス。
「我が意を聴け!我が気を食え!」
ムーングラムを纏ったブロードソードを回し、ファイナルパニッシュメントを作り出しては降下させる。
「我は不退転の脅威!不世出の騎士!不倶戴天の白刃を以て汝等を裁く、一発の雷なり!」
アルスは謳っていた。高らかに、伸びやかに。舞台を占めた役者のように、気が向くままに、本能のままに戦場を駆ける。戦場を統べた酔わせる達成感。脳が痺れるのをアルスは感じていた。
痺れた脳は狂ったように歓喜ばかりを血管に流し込む。歓喜は加速する。アルスは更に酔う。
体が、心が高揚する。
我こそは、我こそはアルス。
クレムフェン・アルス・ウォーケンクルフ。
唯一人の、我。
唯一つの、ハレ。
「っ?!」
アルスはおぞましい殺気を感じてスレイプニルを空中で静止させた。
するとアルスから北に位置する所から多数の黒い腕が伸びてくる。骨のみの無機質な腕がアルスに向かう。手を広げ、つかみかかろうとしてくる。
「受けて立つ!」
アルスはスレイプニルに繋がる手綱を引き、急発進させる。空気や鼓膜を震わしながら、スレイプニルは驀進していく。腕は大蛇の大群のように、蠢きながらアルスを追い掛けて行った。
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