6.風雲逆巻く

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「広がれ、広がれ…!」 アルフレッド・バトラーは左手を地面に当て、右手を広げて指を動かす。背中からは大量の腕が伸び、空へと続いている。 「あの、アルフレッドさん…?」 部下の執行部員が恐る恐る話し掛けた。指示を貰う為だ。アルフレッドは執行部員に目もくれず、口だけ動かして返事をした。 「リカルド様の指示に追随して下さい。私は私で任務に徹する。」 アルフレッドの鳶色の瞳は鈍く輝いていた。息は低いが、獣めいた猛々しさが入り混じる。執行部員達は背筋を震わせてその場を離れていった。 「…死角に入るか。」 アルフレッドは右手で右目に触れると、ゆっくり瞼を下ろした。 「逃がさない。必ず、逃がさない…。」 無機質な声音に、次第に色味が差す。暗く暗い、殺意の色。 「ちぃぃぃっ!」 アルスはスレイプニルを傾け、一気に引いた。スレイプニルの軌跡に腕が何本も突っ込んでいく。だが空振りしても、腕は方向転換して再度迫り来る。 「追尾してくるだと…?!」 アルスはムーングラムに光を込め、振り払う。 「ディバインクロス!」 十字架状の巨大な光が現れ、ぶつかって来た腕を次々と消滅させる。 「距離を取るっ!」 スレイプニルを加速させ、アルスは腕から離れた。腕は森林地帯から伸びている。恐らく此方の位置を捕捉しながら攻撃を仕掛けている。 なら目の届かない死角に逃れるまでだ。
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