6.風雲逆巻く

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「かかっ、壮観って奴か?」 飛白は口を歪めて笑った。頭上に見える、巨大な黒い蕾。形成するのは無数の腕だ。 飛白は一部始終を見ていた。空を自在に駆け回っていたアルスを大量の腕が迫り、包囲した光景を。 「アイツ暴れてたなぁ。」 飛白は森の中に潜んでいる。アルスの姿を見て高ぶった闘志を腹の底に押し込め、静かに息を潜めている。 やはり、戦事は好きだ。ひたすら、好きだ。 縦横無尽に闊歩し、思いのままに叫び、暴れる。己に狂い、己を謳歌する。 強者にしか許されない特権。 弱者には許されぬ特権。 飛白も嘗ては酔っていた。その特権を行使する事に。 だが人は酔うと見境が無くなる。越たる己に愉悦する。愉悦に溺れた己は自分すら知らない自分を露見させる。 飛白はそんな自分を嫌った。己の心を蝕む己を遠ざけた。 「…辛抱ならねぇ。」 だが、理性で律しようとも愉悦を知った体は勝手に疼く。腹の底から壁を破って突き上がろうとする。その衝動に飛白の本能は身を委ねようとする。 「構いやしねぇ。今は違ぇ。」 飛白は踏み出した。上半身は裸、下半身は作務衣。左手には日本刀を握っている。 斬り揉み海老名。 飛白の愛刀。共に特権を行使してきた相棒。 飛白はゆっくり刀を抜いた。 斬り揉み海老名を抜く度に飛白は身震いする。到来する未来に身震いする。 飛白は笑んだ。 「晴れ舞台だ。遠慮するこたねぇ。俺は俺の道を行く。 、、、、、 征くだけだ。」
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