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「落ちろ、落ちろ…!」
アルフレッドは背中から伸びる大量に伸びる腕へと込める念を強める。腕は密集する竹のように軋む。
蕾を形成する腕とは別に、中を貫く形で数本の腕が蕾の内部を弄っている。サハスラブジャで作った眼がアルスの映像をアルフレッドの脳内に送っている為正確な位置を把握しているが、容易く彼は捕まらない。
アルフレッドは微かな苛立ちを覚えるが理性で抑える。意地になって順調になる作業は無い。逆に怜悧さを磨き、作業に徹する。
アルスの抵抗は激しいが長くは無い。大規模な術を使う暇も与えず攻め続ければいずれ崩れ出す。アルフレッドはそう遠くない崩壊を見込み、ジワジワと追い詰める。
「…?」
ふと、アルフレッドの第六感を何かが刺激した。凄まじい勢いで接近する気配がある。
「敵…!」
アルフレッドは先手を取って五本の腕を伸ばした。
だが腕が破壊された感触が伝わる。サハスラブジャに痛覚は無いが破壊された時の歪な感覚は伝わる。
アルフレッドは僅かに気色ばむ。
破壊のスピードが速い。五本の腕を落とすのに十秒もかけていない。
アルフレッドは更に腕を五本伸ばす。
しかしそれらは十秒も経たずに破壊された。伸びきる前に。
「っ!」
「おせぇ!」
アルフレッドの視界に入ったのは閃く白刃。
既に敵は、飛白は目前にいた。
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