6.風雲逆巻く

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「ボケたかぁ?!」 飛白は吠え、斬り揉み海老名を大きく横に五回薙いだ。 「獅子連覇!」 アルフレッドは咄嗟に腕を幾つも畳み、壁を作る。だが全ての斬撃を受けた頃には体は宙を浮いていた。 「くっっ!」 アルフレッドの体は藪の中に飛んでいく。空へ続く腕が激しく軋んだ。支点が崩れた事で蕾が緩んだ。 「二人目ですか…!」 アルフレッドはすぐ体勢を立て直し、飛白と対峙した。 「かてぇな。張り合いがあっていいが、今はてめぇとやり合う気はねぇ。」 「何…?」 「テメェを潰すのはあくまでアイツだ。」 刹那、大量の腕が砕かれる感触がアルフレッドを包む。 「っ!」 見上げると、鋭い閃光が腕の蕾の側面を突き破る様が目に飛び込んだ。 躍り出たのは、アルス。制服のシャツに所々血がこびり付いているがまだまだ健在だ。 スレイプニルに乗るアルスはアルフレッド目掛けて急降下してきた。 「改めて、覚悟!」 「なっ…!」 「アルテマドロップ!」 アルスはムーングラムを纏ったブロードソードを一閃し、三日月状の光を放った。 光は真っ直ぐアルフレッドに向かい、衝突した。爆発が起こり、地面が微かに揺れる。 直後、伸びていた大量の腕が黒い煙になって儚く消えた。 「我、得たり!我、得たり!」 スレイプニルを地上用に変形させて着地し、アルスは勝ち鬨を上げた。 とびきりの笑顔で。
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