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「羽目外すのは後にしろ。」
厳粛に云い放ち、飛白は踵を返した。障る枝葉をかき分けてツカツカと進む。
「計画は次の段階に?」
アルスはスレイプニルを光の珠に戻し、自らに帰した。飛白の後ろを付いて行く。
「らしいぜ。奴らも大人しくやられてばかりいる訳でもあるめぇ。」
「囲まれますな。」
「望む所だぜ。こっからはタマの取り合いだ。」
「高ぶってますな!」
アルスに嬉々と指摘され、飛白は複雑な面持ちになる。
「我を忘れる程じゃねぇよ。」
「それは結構!今はただ謳歌しましょう!」
「アマデオ程じゃねぇがうぜぇな、てめぇも。」
意気揚々と前進するアルスの歩調は速い。飛白は舌打ちし、並行した。
「……。」
アルスの放ったアルテマドロップは地面に小さなクレーターを作った。歪な凹みの中でアルフレッドは立ち上がる。シャツもベストもズボンも泥だらけだ。肌には傷や土埃が付き、血が滲んでいる。
「失態…。」
アルフレッドは唾を吐いた。血が混じっている。口の中で鉄の味が広がっている。不快だ。
「奴ら…」
アルフレッドはポツリと云った。
「奴ら…。奴ら…!奴ら…!!」
語調がせり上がる。
「奴ら!!!」
アルフレッドは憤怒に達した。
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