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本営。
ルーカから伝えられた報告に対し、リカルドはさしてリアクションを示さなかった。アルスを捕らえたアルフレッドが奇襲を受けて取り逃がした。
芳しい報告じゃない。
アルスの大規模攻撃を受けてかなりの被害を受けた状態でアルスを再び自由にするのは危うい展開だ。だがリカルドはチェスで次の手を考える程度の思索を見せるだけで、焦りや苦々しさは見せない。冷静なのは良い事だが余裕過ぎるのも腹の底が読めなくて不安になる。
「アルスを救出したのは?」
不意にリカルドが質問してきた。ルーカは即答する。
「蜻蛉番場飛白です。アルスと共に撤退したようで。」
「ふむ。」
リカルドは眼鏡を押し上げた。
「最初に襲撃を受けたのはエドガーだな?」
「はい。直後にアルスが全方向攻撃を。」
「アルフレッドを蹴散らした後二人が撤退した方角は?」
「南、だそうです。」
「…見えた。」
リカルドは小気味良く指を鳴らした。
「南下した二人の追撃はゼルクレス、黛、月虎にさせろ!エドガーとアルフレッドは北面を捜索!」
「北面…?」
ルーカは怪訝な顔をした。リカルドが編み出した答えがイマイチ不可解だったのだ。
「分からないかルーカ。あの二人は陽動だ。」
リカルドが淡々と説明を始めた。
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