6.風雲逆巻く

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「アルスと飛白の目的は西と北の部隊の突破だろう。最初に奇襲をかけたのはエドガーだし、アルフレッドへの対処があまりに速い。西、北を切り崩して後は軽く周りにちょっかいを出せばアピールは十分。我々の視線を釘付けに出来る訳だ。」 「北面の意味は?」 「サンドハーストがあるこの島の北端は崖やら砂浜がある海岸線だ。そこにも幾つか廃棄プラントがある。恐らく次のアジトにするつもりだろうな。」 「我々にこうして掴まれているのに?」 ルーカの指摘にリカルドは左手の人差し指を上げた。 「アマデオの陣営にはドロシー・ハプス・オーレルがいたな。空間操作系魔法を得意とする女だ。アマデオは抜け目ない男だ。先にプラントの補修を済ませていたのなら、ゲートを付けて海に沈めてしまえば我々は手が出せん。」 「ドロシーはこちらの手に落ちていますが…。」 「ドロシーは設定の段階でいればいい。後の操作は奴がいれば事足りる。スヴェインがいればな。」 ルーカは目を剥いた。リカルドの真意を漸く解したようだ。 リカルドは溜め息をついた。 「一先ず、アマデオとスヴェインを捕捉しないとな。デコイばかり気にかけても始まらん。」 「補充部隊を出しますか?」 「出撃準備だけはさせとけ。役に立たないだろうがな。巨大な個は巨大な個で潰すしかない。」 リカルドはチラリとテントの布を見た。運ばれてきた負傷者と救護班の声が激しく交錯している。頭が痛くなってきた。奇襲とはいえアルスの攻撃で此処まで被害が大きくなるとは。 本営に運ばれる負傷者達の使い道を考えるごとに、リカルドは鬱々としていった。
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