61人が本棚に入れています
本棚に追加
「冴えているねぇ、全く。」
アマデオが軽快に口笛を吹く。
「行くぞ。」
スヴェインは囃しを無視して歩み出す。アマデオは肩を竦めて追随した。
向かう先は本営。
テントを守る執行部員達がワラワラと出て来た。全員無傷で屈強な体つきをしている。手にする得物はメイス、槍、ボーガンなど様々だ。
スヴェインとアマデオは立ち止まり、対峙して示し合わせる。
「騎士が守る城、か。中にいるのが眠り姫なら良かったねぇ。」
「いなくてもやるんだよ。」
「分かっている。露払いは任せたぞ?一張羅なんだ。濡れるのは忍びない。」
「ンなツラかよ。」
軽口を叩くアマデオを流し、スヴェインはダガーを持った両手を広げた。
「貴様等…スヴェインとアマデオ!どうして此処に?!」
メイスを持つ執行部員ががなった。無節操な声だ。威嚇しているが動揺が隠せていない。彼らはスヴェインとアマデオが此処に現れるなど露ぞ考えてなかっただろう。
アマデオは愉快そうに微笑み、舌なめずりした。唇を湿らせ、目をぎらつかせる。
スヴェインが横目でアマデオを見やる。相変わらずの面持ちに呆れて、溜め息をついた。
「アマデオ。すぐ行けよ?」
「あぁ、行くぜ。行きたくて仕様がない。」
スヴェインはダガーに魔力を込めた。それぞれのダガーが赤く輝き、炎が上がる。炎は茸のように膨らむ。
スヴェインの魔法を見てメイスを持つ執行部員が顔をひきつらせた。
「っ!その魔法は…」
「ヘルファイア。」
二つの炎が爆発しながら発射され、テント前で大きく爆ぜた。
最初のコメントを投稿しよう!