6.風雲逆巻く

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「…ったく、囲むの早ぇな。」 飛白は忌々しげに辺りを見渡す。木々に紛れて見え隠れする人影。飛白とアルスを追い詰めに掛かった執行部員達だ。数はざっと二十人だろうか。 注がれる敵意と視線が煩わしい。肌が逆撫でされるような不快感が全身を包む。 「群れて畳むしか能がねぇ奴らなんざ気も上がりゃしねぇ。」 「構いますまい!敵意には懲罰を以て遇するのみ。」 アルスが活き活きと答える。瞳を輝かせ、ブロードソードの柄を握り直す。 「調子が良いな、てめぇはよ。」 「私の本懐なれば!」 呆れ気味に云う飛白とあべこべな元気良さを振り撒き、アルスはブロードソードに光を蓄積させる。瞬く間に光の刃が形成された。 「ムーングラム!」 アルスはムーングラムを振り回し、周囲を一掃した。悲鳴と共にバタバタと執行部員達が薙ぎ倒されていく。 「雑魚に気張ってどうすんだ。気の無駄だぜ。」 アルスの大振りな攻撃の合間を突いて襲い掛かって来た執行部員を飛白は片っ端から蹴散らす。 「たぎらねぇんだよ。屑ばっか斬ってたら頭がぼけてくらぁ。反吐みてぇな自惚れなんざいらねぇ。」 飛白は斬り揉み海老名を振り上げ、一気に振り下ろす。大地に亀裂が入り、鳴動する。執行部員は戦慄し、徐々に距離を取り始める。 「群れて下がる度胸ならハナから出てくんな馬鹿野郎。」 「相変わらず、良い煮えっぷりだねぇ。」 不意に女の声が耳に届き、飛白は片眉を上げた。
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