6.風雲逆巻く

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「あぁ?」 視線を向けると女が立っていた。見た事がある。梓子だ。以前やり合った女だ。長い付け爪を全ての指に付けていた。 「ンだよテメェか。眼中にねぇぞ売女。」 邪険に接する飛白に梓子は僅かに眉を動かしたが、平静を保ったまま話し出す。 「やな云い草だねぇ。ちょっとはしおらしくなって欲しいもんだ。」 「しおらしくすんのはテメェだ。床の間に行きゃあ少しはそうなんのか?」 話は無駄だ。 梓子はそう云わんばかりに首を振った。 そして不意に、右手を振る。 「ブラックアート、足疾!」 言葉の直後に梓子の背後から二つの影が飛び出した。影は目にも止まらぬ速度で飛白を通り過ぎる。 「あぁっ?!」 影は真っ直ぐアルスの下へ向かう。そしてアルスを捕まえて一目散に去って行った。 「何っ?!」 「おいアルス!」 「アンタの相手はこっちさね!」 梓子の一声を合図に、また新しい影が茂みの奥から現れた。 特徴的な髪型と日本刀。 「黛ぃ…!」 仏頂面で、瞳にだけ闘志を灯す黛が飛白の前に立つ。 飛白の表情が複雑になる。 口元には残酷な笑みが浮き上がっているが、目は違う。怒りが宿っている。誤れば爆散しかねない危険な怒り。 飛白と黛が対峙した瞬間、森が一層ざわめいたと、梓子は肌で感じた。
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