1.闇に踊る

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「当然の自己防衛だと思いますよ。自分を侵す存在が中にいるんだから。」 「だがその存在に背を向け続けると、嫌な形でツケを払う羽目になる。人間、想像以上に考えなければならない生き物だからな。」 「だからってクヨクヨ考えて足を止めちゃダメでしょう。がむしゃらに生きてみろって、背中でも叩いてみます?」 ジョゼフが歩き出したので、ベルクロフトも続いた。歩くベルクロフトは、柔和な彼らしからぬ、気難しい顔をしていた。 「解決策ではあるね。だが正しい形でやらなきゃ効果は無い。それに、我々が促す事じゃあない。シオが生きるのはこっちじゃないからな。 促すのは、彼らだよ。」 「仲間や友達の力ですか?」 「理事長は独りでクヨクヨ悩めと云ってた訳じゃないだろう?」 ジョゼフは唸った。 「成る程、ねー…。」 納得するジョゼフに対し、ベルクロフトはまだ気難しい顔をしている。 「だけど…今のシオは危ういよ。逃避を覚えてしまった。それも無意識に。」 「重要な問題ですか?それ。」 ジョゼフが首を傾げた。ベルクロフトは指を立てて説く。 「決意した上でのがむしゃらと逃避の延長上のがむしゃらは意味が違う。それくらいは、気付いて欲しいんだがね。」 「気付かせます?」 ベルクロフトは一瞬考え、頭を振った。 「駄目だ。うん、駄目だね…。私達が望む形にしてもシオの為にはならない。」 「もどかしいですねぇ。」 「職業がら気にかけすぎてるね。全く、職業病だ。」 ベルクロフトはもどかしさを溜め息で押し流す。ジョゼフも晴れない顔をしていた。 もうシオの部屋から大分離れているのに、背筋に刺さる懸念はより強くなっていた。
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