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「会長!」
焦燥が滲む声を受けて、レイルは思案を止めた。振り返るとサリアが駆け寄ってくる。
リカルドの有能な助手だがリカルド程肝は据わっていない。表情で彼女の心境は手に取るように分かった。
きっと悪い知らせだ。
「サリア、走ると髪が乱れるよ。」
「えっ?あっ!」
サリアは荒れて額や頬に張り付いた髪を慌てて直した。粗方整えると、一息ついてレイルに向く。
「リカルドがいる本営にスヴェインとアマデオが現れました!後陣はもう混乱状態で…」
「なるほど。」
レイルはサリアに背を向け、広間を回ると屈んだ。
本営付近で一人の男が動いている。男が一度動く毎に辺りにいる執行部員が倒れた。
「…タダでは背を向けない、か。」
レイルは立ち上がり、出入り口に向かってツカツカと歩き出した。
「プ、会長?!」
慌てて追い掛けるサリアにレイルは涼やかな笑みを返す。
「援護するよ。今はみんな忙しいからね。」
「しかし…」
「これ以上脱落者を作りたくないんだ。折角約束したのに。」
「約束?」
レイルは再び歩き出す。
「みんなを連れて行く。ちゃんとした未来へね。だから行くよ。
守らなきゃ。」
レイルは胸に手を当てた。強くシャツを握る。
「まだ終わる訳にはいかない。」
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