61人が本棚に入れています
本棚に追加
「第二波っ!」
スヴェインは飛来する三本の矢に対し身構えた。矢は発光し、青白い光の筋になる。
あの魔法にはアーツスナッチは使えない。アーツスナッチの発動条件を満たしていないのだ。
アーツスナッチの発動条件は二つ。
一つは術の形状、特性への理解。
もう一つは術の正式な術名だ。
これらの条件故にアーツスナッチは不意打ちには弱い。相手の術への理解が阻害されるからだ。
「ちっ…!」
対抗策はソリッドリムーブしかない。レイルが仕掛ける超遠距離射撃と張り合う術をスヴェインは持ち合わせていないからだ。
「ソリッドリムーブ!」
再び大気に波紋を作り、矢を防ごうとする。
だが、矢は急激に軌道を変えると、蛇のような動きでスヴェインの背後に回った。
「何?!」
スヴェインは素早く回避する。矢はギリギリまでスヴェインを追尾し、左太股と右の二の腕を掠って行った。
「うぜぇ。」
スヴェインは力を失して転がる矢を睨み、レイルに目を移した。数百メートル離れているが、レイルは弓を構え直しているのは分かった。次の攻撃の動作だ。
「仕方ねぇな。」
スヴェインは左手のダガーを唇に当てた。目を閉じ、魔力を集中させる。
耳が次の矢の発射音を捉えた。甲高い空を裂く音。
矢は速攻でスヴェインに届くだろう。殺意の気配が近付いてくる。
対してスヴェインは冷静だ。冷静に、スヴェインは術式を組み上げる。
「接吻(くちづけ)を、ユダ!」
最初のコメントを投稿しよう!