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スヴェインの胸から放出された光の珠が輪郭を作り出す。
現れたのは一抱えはある巨大な銀貨だ。一枚だけじゃない。鎖で繋がれたそれは三十枚はある。それらが球体を形成していた。そして球体の中央には少女がいる。か細く、血の気の無い白い裸体が浮かんでいる。髪は艶の無い灰色。生気の無い無表情な顔は瞳に虚ろを宿していた。
「ユダ。30シルバーズだ。」
スヴェインの一声でユダは音も無くスヴェインの前に移動した。
ユダの視線がレイルに向く。レイルとユダの間には矢がある。五本の光の矢。レイルがユダを認識したのだろう、矢は突然生き物のように曲がり、軌道を変更した。
だがユダは動じもせず右手を上げた。銀貨が展開し、壁を作る。矢は回り込もうと更に軌道を変えた。
刹那、矢が停止した。空中でピッタリ静止している。
すると矢は反転し、レイルに向かって飛翔していった。
屋上で経緯を見ていたサリアは飛び上がる。
「なんで?!術の軌道が変わった!?」
「サリア!伏せろ!」
レイルの鋭い注意を受け、サリアは頭を抱えてしゃがみ込んだ。
「ソリッドリムーブ!」
指を鳴らしてレイルは大気に波紋を発生させる。スヴェインの術より遥かに大きな波紋だ。
波紋に遮られた矢は次第に力を失し、下に転がった。
「な、何?!今の?!」
まだ頭を抱えたまま、サリアは涙目を見せた。その顔が間抜けで可笑しくて、レイルは思わず吹き出す。
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