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クローズドホームセキュリティールーム。
「レイルが出張ったぁ?」
レオノーラ・ファンデンは椅子の上でふんぞり返り、結い上げた栗色の髪をいじりながら欠伸した。梟のように大きな瞳はすっかり緩んでいる。緊張感は欠片も無い。
「アイツも頑張るねー。何だかんだでスヴェインが憎いのかな、アイツ。」
上半身はビキニ一つ、下はスキニーパンツ。両足には洒落たサンダルを履いている。大胆だが簡素な格好だ。
今彼女が腰掛けている席は元々リカルドが良く座っている場所だ。今回はリカルドが前線に出ているが故にレオノーラが代わりに後詰めを引き受けている。状況を見て増援を出したり、NOISEやリク達の足止めの監視の指示を行っている。
『リカルドさん達は保つんだろうか…。』
隣でスピーカー越しの濁った声が聴こえた。
私服やブレザー姿が目立つセキュリティールームで一際異様な姿をした男がいる。性別の判断は体のラインからしか窺えない。独特の装飾を凝らしたフルフェイスの兜、レーススーツのようなデザインの鎧。異世界の住人めいた外見に加え、右手には身の丈以上の大鎌を持っている。異様さに加え物々しさが光っていた。
スティンガー・メタルパレスは無表情に画面を見ている。
「大丈夫よ。アイツそんなタマじゃないし。」
レオノーラは素っ気なく返した。
スティンガーは咎めるように兜を傾けた。見えない目が非難する。
「何?事実でしょ。不安だったら駆け付けてやんなよ。」
レオノーラは口を歪めて笑った。
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