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リカルドは訝しげな顔をしながらも、耳を澄ませた。遠い地鳴りのような音が聴こえる。いや地鳴りじゃない。音は空から降ってくる。か細いが、間違いない。
推測は容易だった。
「貴様っ…!」
「ぬぅ、小さな花火だな。思った以上じゃないな。」
アマデオは不満そうに口を尖らせた。だが目は笑っている。
「次は高々と上げよう。より鮮やかにより華やかに!青空を焦がさんばかりに!」
「減らず口を…!」
リカルドはゆっくり立ち上がった。足取りは覚束無い。
アマデオは露骨に憐れんでみせる。
「カプリチオは始まったんだぜ?調和を掻き乱す真似はお控え頂きたいねぇ!」
「バカが…!」
リカルドは両手に嵌めた手袋を強く引いた。
「我々は個の集合体だ…。ただの一枚岩じゃない。砕けても…個々の意志で動く。」
「おや、見当違いをしたかな?団結がお前達の強みだと思っていたが。」
「違うな。団結のニュアンスが違う。」
リカルドは微笑んだ。虚勢じゃない。勝機を得た微笑み。
アマデオが初めて笑いを失した。
「俺達はレイルの旗の下で団結する。だからレイルがいる限り、俺達は力を発揮し続ける。」
「そいつは…。っ?!」
急にアマデオが顔を強ばらせる。背中に激痛。振り返ると、太い樹木の束が背中に食い込んでいる。樹木を辿ると先程失神させた筈のルーカが立っていた。呪符を手にし、激昂している。こめかみから血が流れているが気になっていないようだ。
「おや、まあ…」
アマデオは唇を歪めた。気配を察し、顔を向けるとリカルドが接近していた。右手をアマデオの胸に付ける。
「云い忘れた。両ノ手に籍を置く俺も…人並みな訳が無い。」
強烈な衝撃波がアマデオの体を撃ち抜いた。
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