61人が本棚に入れています
本棚に追加
シオは眼下の自分の両足を見る。指定の革靴に収まった自分の足。土にまみれ、微かな疲れを帯びている。だが、今現在、力強くシオを支えている。多くの経験を宿し、シオが意識しなくてもシオを支える責務を担っている。
自分の一部だが、両足が語り掛けて来たように感じた。
今は行け。
、、
征け。
シオは唇を引き結ぶ。
どうせまた悩む。
どうせまたぶつかる。
でも今はそんな諍いに足止めされなくていい。
いや、したらダメだ。
行くんだ。
徐にシオは立ち上がった。顔を上げて、しっかりとジャクリーンを見据える。
シオの胸中は言葉にせずともジャクリーンに伝わった。
ジャクリーンは頷き、にっと笑った。
「よっし、ヤレるアンタがいたら百人力だ。」
ジャクリーンの屈託の無い笑顔がシオの背中を押した。二人は意を決して本営前に向かう。
すると突然ジャクリーンの端末が鳴った。二人は飛び跳ね、慌てて身を隠す。ジャクリーンは苛立った顔で端末を開いた。
「何?!」
『おわっ!イライラしてんなぁ、ジャクリーン。』
軽薄な声。
エンだ。
ジャクリーンは露骨に失望を込めて溜め息をついた。
「マジ空気読めお前…。」
『えぇー…。クローズドホームの内情報告だよジャクリーンちゃん。』
「知らない!」
『ンな理不尽な…。』
エンは悲しげに云った後、気を取り直して続けた。
最初のコメントを投稿しよう!