8.ジャスト・ムーブ

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「バニシングスフィア!」 レイルの魔法だ。シオは杖を返し、先端を球体へ向けた。術越しの不意打ちならあの召還体で防げ余裕は無いだろう。 「エアリアルブルー!」 先端に大気が渦巻き、点火したように炸裂する。粒子が鋭い線になってバニシングスフィアに突っ込んでいく。 「これならっ…!」 「ハッ!30シルバーズ!」 スヴェインは指を鳴らしてユダを配置した。ユダは髪を靡かせ、うつろげな瞳をシオに向ける。 するとエアリアルブルーが湾曲し、またバニシングスフィアも不規則な起動を描き出した。二つ共シオへ向かう。 「自分の術も操作できっ…!」 シオは慌ててレイディアントエアーを張ろうとするが間に合わない。エアリアルブルーは距離が近い上に速い。加えてバニシングスフィアも接近している。 シオは咄嗟にストライクブレスを地面に叩き付けて体を浮上させた。エアリアルブルーをやり過ごす。だがバニシングスフィアはしっかりシオを追尾してくる。 シオは杖を振るい、魔力を込めてバニシングスフィアを打ち払おうとした。杖とバニシングスフィアが接触する。 小規模な爆発が起こる。シオの体は地面に叩きつけられた。 「がはっ!」 背中から叩きつけられた為呼吸が乱れる。体中が痛む。シオは無理矢理体を起こし、スヴェインと向き合った。 「訳が分かんねえ。テメェは、一体、なにもんだ?」 「俺は…俺だ。あなたと今日初めて会った人だ。」 シオは健常を誇示した。自らの中の他者が大きくなる感触がする。その感触を少しでも振り払うには空元気が一番だった。
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