8.ジャスト・ムーブ

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「ンな答え聞き飽きたんだよ。何でテメェが失われた家を知っている?」 「分からない…。」 「平行線かよ。」 スヴェインの苛立ちがせり上がる。シオは肌で感じるがどうしようもない。シオは正直に語っている。自身が抱える複雑な事情までは言及していないが、自分でも理解しきれていないのだ。 「もういい。オウムと喋ってるみてーだ。アホらしい。」 スヴェインは荒々しく息を吐いた。気分は収まってないだろう。 「予定を変える。てめぇは縛り上げて連れ帰る。拷問だ。血反吐と一緒に吐かせてやる。」 やっぱり。 スヴェインの機嫌は物騒な方向に悪化している。 予定では生徒会を攪乱させるつもりだったが此処までくると一度スヴェインと雌雄を決するしかない。 「シオだっけか。テメェの名前は。」 「…そうだ、スヴェイン、さん。」 「後悔すんなよ。テメェが悪いんだ。余計な事を云うからだ。人の過去に触れたからにはテメェは逃げられねぇ。どうなろうが因果応報ってヤツだ。」 スヴェインはダガーを構えた。 シオの心境が揺らぐ。後悔じゃない。無意識にパンドラの箱を開けてしまった事への惑いだ。今までただ首を突っ込んで、当事者の間に挟まれるだけじゃ済まないだろう。シオは重大な予感を抱く。 全ての道筋が自分に直結している。 シオも計りかねる自身の深部に。 微かに、シオは怖れた。
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