8.ジャスト・ムーブ

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シオとスヴェインの対峙は数秒しか無かったが、体感時間は酷く冗長だった。にじりよるスヴェインに対しシオは直立不動を維持する。対峙が一層長く感じられた。 しかし対峙は予期せぬ形で終息する。 本営であるテントの入り口から人が一人転がり出て来たのだ。 嫌でもシオとスヴェインの視線が奪われる。 転がり出て来たのは男だった。痩せこけた男。全身がみっともなく汚れており、満身創痍だ。 「アマデオ…!」 スヴェインが苦々しく呟いた。両目に懸念が浮かぶ。 「いやいやいやいや!」 だが懸念は一瞬で消え去った。アマデオが勢い良く起き上がったからだ。満身創痍の上に鼻から血が流れている。血まみれの顔は生来の痩せこけた顔のせいで不気味に仕上がっているがアマデオは元気そうだ。寧ろより溌剌としている。 「スヴェイン、退却だ!機は十分熟れた。腐り落ちる前に撤退だ!」 「あぁ?テメェ何ふざけた事…!」 「反論無用!クールに勝ち逃げしようじゃないか。」 アマデオは容赦なく縄を投げつけてスヴェインを縛った。 「あっ!ざけんなアマデオ!」 「自ずと奴らは撤退する。クローズドホームはガタガタ、おまけにNOISEが牙を剥いた!無駄なく無理なく引き下がろう。」 アマデオは暴れるスヴェインに蹴られ、頭突きされながら足早に立ち去って行った。 残されたシオはただ呆然と二人を見送る。 「アマデオ!アマデオは何処だ!」 続いてテントからリカルドとルーカが顔を出した。憤慨した面持ちだ。 「シオ?!どうして此処に…!」 背後からエリスとブリジット、加えて多くの執行部員が現れた。後続の部隊だろう。 エリスの声にリカルドとルーカも反応し、シオを見付ける。 「…ヤバい。」 シオは冷や汗を流した。
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