8.ジャスト・ムーブ

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「もう戦わない!行かせてくれ!」 シオに戦意は無かった。NOISEのプラントから落下した二人組の事しか頭に無い。人相も知れないのに、シオには仲間だと思えてしょうがない。体が行きたがっていた。 「何を焦っている?次のフェーズに入るのか?」 リカルドは冷ややかだ。シオを通そうとする意志は感じられない。 「そんなんじゃない!信じてくれ!」 「不確定要素ではないという証立てを。」 「あれを見ろよ!あれを!」 シオが必死の形相で頭上を指差す。リカルドは訝しげな顔のまま、見上げた。 「っ!」 リカルドが表情を変えた。リカルドの豹変にルーカやエリス達も見上げる。 落下する二人。地上に近付く毎に姿が明らかになる。一人が何やら翼のようなモノを広げた段階で人相が明らかになった。ヲリエとメイデンだ。 「バカな!」 リカルドは端末を開き、連絡を始める。 「あれ!」 エリスの一声に再度視線が集中する。ヲリエとメイデンの様子がおかしい。突然大量の鎖が二人に巻き付いたかと思うと、二人は急落下した。校舎に近付いている。加速している。止まらない。 「チーフ!」 二人は二階の窓ガラスを突き破った。 「くそっ!リントめ!おいルーカ!」 電話を終えたリカルドは端末を仕舞いながら指令を飛ばす。 「そいつを拘束しろ。一年生達は校舎内に戻れ!フリスの安否を確認する!」 エリス達は反転して校舎に向かう。 「チーフ、チーフ!」 シオも校舎に駆け付けようとするが、背後から迫ったルーカに取り押さえられた。 「くっ!放せ、放せよ!」 「大人しくしろ!」 ルーカは容赦なくシオの右腕をねじ上げた。 「チーフ!チーフ!」 シオは尚も叫び続けたが、叫びは虚しく宙に溶けた。
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