8.ジャスト・ムーブ

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『どうした、何が…』 「チーフ!」 リントは端末を放り出し、穴を覗き込む。 ヲリエは落下を続け、穴の視界から消えた。 「マズい…!」 リントは編集室のドアへ駆けた。リントも続く。 ラウル達が何が云った気がしたが耳に入らなかった。 クローズドホーム。 「酷い有り様ね…。」 サリアは顔をしかめた。クローズドホームはさながら自爆テロにあったかのようになっている。幾つも部屋が壊され、壁が崩れている。負傷者も多く、医療班があちこち走り回っている。 騒然としている人の流れに囲まれ、レイルは黙々と歩いている。顔からサリアはレイルの感情を読み取れない。怒りがあるだろう。絶望があるだろう。悲しみがあるだろう。 先入観で並べ立てる事は出来る。だがどれも当てはまらない気がする。レイルは無表情だ。思い付く感情のどれにもそぐわない。無表情の仮面の下にどんな素顔を隠しているのだろうか。 「サリア。」 出し抜けにレイルが口を開いた。平坦な語調だ。 「被害報告を速く纏めさせてくれ。後実行犯の特定も。」 「はい!」 サリアは駆けて行った。レイルは辺りを見渡し、溜め息をついた。 「後詰めと前線が分断されたら危険だな。迅速に立て直さないと。」
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