8.ジャスト・ムーブ

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『被害状況はどうなんです?前線は?』 スティンガーが切り替えて尋ねてきた。 「少し面倒な事になっている。クローズドホームは混乱状態、前線は膠着している。おまけにNOISEが介入してきてね。」 『立て直せますか?』 「クローズドホームが攻撃された情報はもう流れている。前線が混乱する前に立て直したいけど…難しそうだ。」 「一年生の後続部隊は送ったよ。ただ指揮系統が滅茶苦茶。機能するかは分かんない。」 レオノーラは不機嫌そうに鼻を鳴らした。機嫌を損ねるとレオノーラは粗野になる。 「もう前線の成果次第じゃない?アマデオ達はこのドサクサに紛れて逃げる腹なんでしょ。今捕まえられなかったら全部水の泡。」 「そうだね。あまりごり押ししてもみんなを疲れさせるだけだ。」 『…事実を話したらどうです。』 スティンガーが暗く、噛みつくように云った。レイルとレオノーラは沈黙する。レオノーラが視線をスティンガーに向けた。警告を込めている。 『厳戒態勢だったクローズドホームが内部から爆破された。それも要所を的確に。こんな事が出来るのは他でも無い、内部の人』 「スティンガー。」 レイルが遮った。厳粛な面持ちで。 「今その情報は毒だ。口にしちゃいけない。疑心暗鬼が運びったらそれこそ危険だ。この状況だと尚更ね。」 「…軽はずみに云うもんじゃないわよ。」 レオノーラも云った。 スティンガーは押し黙る。二人の表情が一変したからだ。呑気に振る舞っているように見えて、実は裏で誰よりも重く捉えている。二人の頭の中はきっと先を考えている。内部からの爆破をどの立場にいる人間なら出来るかなんて誰でも思い付く。ただ混乱の中だから表面化していないだけだ。誰かが声高に叫べば、確実に体勢は崩壊する。
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