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レオノーラはただ見守る。レイルは動揺なんてしない。取り乱しはしない。目的を見据えている。信念を抱いている。腹の中でしっかり突き立てた柱がある。どんな波にも揺れにも耐えうる柱が。
信頼している。
レオノーラは強く想う。
レイルの真価は此処にある。
今測られようとしている。
「…サリア。」
レイルの声。その場にいる全員が耳を傾ける。
「戦闘行為の停止を呼び掛けてくれ。終戦だ。」
レオノーラは呆れたように微笑んだ。
本当に、こいつは。
サリアは頷き、その場にいた執行部員に声をかけてまだ使える通信機器で連絡を回す。
「無事だよ、アイツは。」
レオノーラは云った。相変わらずの素っ気なさだが、彼女なりの心配だ。
「甘いと思うかい?」
レイルは振り向かずに云う。言葉の端に自責が滲む。
「戦略的には悪くないんじゃない?ヲリエが乱入してきたら前線の維持がしんどくなるしね。潮時だと思うよ。」
「だけど、君達なら勝てる。」
「死ぬ気でやればね。でもやだよ。あの日の前に疲弊するのは得策じゃない。」
「…不純な動機だ。」
レオノーラは苦笑した。
「知ってる。でもいいじゃん。アンタがそんな人種って知っているし。アンタの匙加減で決まるチームだぜ?誰も反対しないよ。」
「…ありがとう。」
レイルは胸を抑えて黙り込む。葛藤しているのだろう。もうレオノーラは話し掛けない。
レイルはしっかりした眼差しでどこかへ想いを馳せている。どこへかはレオノーラには分からない。
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