8.ジャスト・ムーブ

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校舎内。 クローズドホームから逃げおおせたリクとドロシーはうらぶれた資料室に潜んでいた。以前ヴァンクラウンとやり合った場所だ。非常時に、それも外が主戦場になっている今、此処に目を配る余裕は生徒会には無いだろう。追っ手の類は見えない。クローズドホーム内のあの爆発で手が回らないのだろう。おまけに生徒会が戒厳令を敷いたのか校内に生徒は殆どいない。都合が良い状況だ。 リクは資料室に転がっていたハサミを手にして鍵をかけたドアの前に座していた。心許ない得物だが無いより良い。いざと云う時は魔法がある。スクァッシュがいる。 「りっく~ん。そんなピリピリしないでよぉ。つまんないじゃん。」 警戒するリクを呆れで弛緩させるのはドロシーだ。暇そうに資料室の椅子に腰掛けている。 「…今の状況だったら当然ですって。」 「どーせアイツ等自分達の事でてんてこまいだから大丈夫だよぉ。それよりこんな密室に女の子連れ込んでどうするつもりぃ?」 ドロシーが意地悪く笑う。リクはバツが悪い顔をした。 ドロシーの云う事にも一理ある。元々戦力の分散が目的でリクとドロシーを軟禁したのだろう。だがリクとドロシーがいない状態で予期せぬ事態が発生した。しかも本拠地で。前線は前線で難儀しているようだった。そんな中で高々脱走者二人を捕らえるのに戦力を割くとは思えない。 リクは警戒しすぎていると自覚している。だが腹を据えて静観出来る程リクは場数を踏んではいない。警戒するくらいが気楽だった。 しかし気楽にもなりきれない。腑に落ちない事があった。 「…にしてもクローズドホームのあの爆発は誰がやったんだ?」
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