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「ルーク!」
ドロシーの元へ行こうとするルークをリクは呼び止めた。
「お前…どうしてこんな事を?」
ルークは立ち止まり、振り返った。瞳の様子が変わっている。僅かだが、温かみが宿っている。
「…お前ってさ、結構なお人好しだよな。無様なくらい正直なお人好し。」
リクは頬を赤らめる。面と向かって云われるとばつが悪い。
「まぁ、でも嫌いじゃないけどな。」
「えっ?」
「世の中ってのはペテンの塊みてぇなもんだ。みんなの為、みんなの為って謳ってやる事なんて全部嘘ばっかりだ。実際は誰も、何も助けていない。大勢が手を叩いて喜ぶ理想は本当に苦しんでいる奴を救えやしない。」
「ルーク…?」
ルークが強迫的に見えた。自身に対して。
己が掲げている理想の重圧を堪え、理想の為に自身を追い詰める。多少の傷や痛みも構わない。前進し、目的を全うする事に全身全霊を賭けている。
ルークの物云いは抽象的だ。過去の全貌までは分からない。だが、リクには彼の熱意の程が伝わった。
エゴイスティックで、切実で、真剣。
そして、そんな信念を抱える自分に
、、、、、
狂っている。
ルークがクルリと背中を向けて歩き出す。
リクも歩き出した。
新たな仲間の発覚はリクの心に大きな波紋を作る。
状況は加速していた。
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