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同時刻、男子寮。
アレンの部屋には馴染みの面子が集まっていた。シャーロックとデイジー。本当は女子が男子の寮に入るのは御法度だが今の状況で咎める人間はいない。
いきなり戒厳令が布かれてから三人は退屈を持て余していた。恐らく渦中にいるであろうシオ、リク、シェリル、ラウル、エリス、ブリジットの安否が心の片隅に引っかかっていたが、おいそれと首を突っ込む訳にはいかない。友人の事情を、実の所彼らは完璧に把握していないからだ。
友人が二分されて戦っているという状況にアレン達は慣れていた。どちらかが憎らしくなるとか、そういう感情は抱かない。ある種の摂理なのだ。勉強の成績を競ったりするのと同じ原理だ。怒りや憎しみ、敵意から生まれる対立じゃない。行く道が違うが故にぶつかる、切ない擦れ違い。
これは止めるとか和解させるとかそんな次元の話じゃない。彼らに許された事は見守る事だ。話を訊く、NOISEを読む、間近で見る。様々な手段を行使して彼らは見守る。関わると云う一線の手前で佇み、注意深く見守っている。
悲観している訳でも冷徹な訳でも無い。
関わる時を彼らは理解しているのだ。シオ達が目的を忘れ、無意味な戦いを始めた時。怒りや憎しみが剥き出しになり、取り返しのつかない領域へ行こうとしている時。
その時を彼らは理解している。
その時を彼らは待っている。
はちきれんばかりのもどかしさを胸の奥に抱えながら。
故にアレンの部屋には独特な空気が満ちていた。退屈で、静粛だが一度何か起これば一瞬で切り替わる。そんな見えない分水嶺が聳えている。
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