8.ジャスト・ムーブ

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「そこまで達観しているつもりは無いけどね。まぁリクとは腐れ縁だから。慣れたって云うのが的確かな。」 「信じているんだ、リクを。」 アレンが手札を二枚変えたのに続き、デイジーは三枚変える。デイジーは落ち着かない面持ちになっていた。エリスや、多くの友達が頭に過ぎったのだろう。 「君達もそうだろう?こんな立ち回り、そうじゃないと出来ないさ。」 「そりぁあ、な…。」 シャーロックは手札を全て捨てて山札から五枚引いた。 「畑が違うのさ。」 アレンは続けて語る。 「どんなに近くにいても、どんなに仲が良くても越えられない何か決定的な境目がある。迂闊に越えたらカオスだ。酷い事になる。」 アレンはまた二枚捨てた。そして二枚引く。 「…そいつは違うんじゃねぇか、アレン。」 シャーロックが呟くように云った。 「あたしもそう思う。」 デイジーも頷いた。デイジーは一枚捨てて、一枚引く。 「シオみたいに、本当に相手を想う気持ちがあれば、例え関わりの無い事でも関わっていけると想う。」 デイジーには過去がある。家庭の事で虐めを受けていたエリスを助けた過去。その事がエリスの重荷になっているとデイジーは分かっている。 「後悔したくないもんな。あぁしときゃ良かったって、ずっと考えたくねぇもん、俺。」 シャーロックは快刀乱麻だ。煩わしい思考や苦悩に支配されない。悪く云えば考え無しだが、不必要な心配をしない分人生に後悔を残してはいないのだろう。 「そいつにしか出来ない事とか、そいつじゃないとダメな事ってのはあるんだ。でも、誰かが手を差し伸べてやれる事もあるんだよ。それがあんなら、やらなきゃいけねぇと思うんだ。」 シャーロックはまた全部捨てた。
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