8.ジャスト・ムーブ

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「末摘花。」 黛は大量のチャージインパクトを見舞うが飛白は直撃しても平然としている。それどころか勢い良く接近してくる。 飛白の斬撃を賺さず黛は揺歩でかわす。 徐に飛白は近くの木の幹を掴み、片手で引っこ抜いて、投げつける。 「ガサツな!」 黛は舌打ちして縮地で木をかいくぐり、飛白の懐に入る。 だが飛白は待ち構えていた。切っ先を黛に向けている。 「くっ…!」 容赦ない刺突。 黛は顔を傾けた。刀が頬を掠る。冷たい感触が熱くなる。敗北が命に触れる。 「無花果発火!」 抜刀の要領で柄を強く射出する。柄の先が飛白の胸を強く打った。 飛白は諸共しない。造作も無く黛の胸倉を掴み、軽々と投げ飛ばす。 黛は木に叩き付けられ、地に落ちた。 「くはは…!」 黛は口から血を流しながら立ち上がった。 「無粋な戦い方だ…!獣だな、やはり。」 飛白は答えない。聴いているかも分からない。恐らく、今の飛白は何もかもを聞いていて、何もかもを聴いていないのだ。 「獣は調伏されねばならない。お前は俺に斬り伏せられる。確実に。」 「…。」 飛白がゆっくり刀を上げた。こちらの話など関係無く攻撃に転化する。 「お前が消えれば俺は名実共にサンドハースト最強の武人となる。揺るがない、絶対的な!」 飛白が接近する。黛が話している途中に。だが黛は既に柄に手をかけている。 「飛牙乱菊!」 強烈な斬撃が飛白の動きを止めた。黛が次々と構えを変えて凄まじい速度の抜刀を繰り出す。吹き荒ぶ風に舞う花びらのように、軌道は読めない。 「殺った!」 飛白は応戦する。互角かと思われたが肩、腕、胸が少しずつ傷付いていく。今の黛はハイブリッドソウルを使用している飛白に匹敵するスピードを有している。 飛白の仮面に血飛沫がついた。
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