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「強くなりたいのかい?おやまぁ、そりゃまた大層な望みだ。」
次はアンタか。
飛白は辟易するが、耳を澄ます。
懐かしい。
「今のお前さんは随分強いと思うがねぇ。まだ強くなりたいかい?業突張りだねぇ。」
うるせぇ。
てめぇも同じ部類だろうが。
「んじゃ、老婆心ながら云わせてもらおうか。いいかい?手前の力って奴は聞かん坊だ。大人しくしちゃくれねぇ。暴れ馬みたいなもんだ。だがらヒョイと手綱をかけてやる。だけどコイツが難しい。暴れ馬だぜ?ちょっとやそっとで云う事を聴く訳が無い!だから最初は戦わなきゃならねぇ。ンで、ポカスカやってる内に云う事を聴いてくる。此処までくらぁ上出来だ。後は馬が死なねぇように上手く操ってやりゃいい。
わかるかい?
武は己と戦う為にある。
武は己を守る為にある。
だからよ。
お前さんは、お前さんの為に武を振るえばいい。」
うるせぇよ。
…知ってんだよ。
飛白は踏み出す。
思考をゆっくり回す。
心を丁寧に開く。
動け、動け。
体は俺のもの。
空っぽの器の隅々まで水を送り出す。
水が行き渡った。
飛白は感触をゆっくり馴染ませた。
これでいい。
、、、
いける。
手始めだ。
両手を伸ばせ。
瞼を開けろ。
飛白の両腕にひんやりした空気が当たった。
飛白の視界を光が満たした。
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