8.ジャスト・ムーブ

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飛白の視界が蘇る。鮮やかだ。ハイブリッドソウルを発動している時は視界が視界として機能していない。ただの光景に過ぎない。 改めて人の目で見ると、視界と云うものは何とも生々しい。 目の前に黛がいる。傷だらけだ。驚きで目を丸くしている。伸ばした両腕に驚いて退いたのだろう。距離がある。 飛白は痛みを感じた。伸ばした腕を見る。血だらけだ。傷だらけだ。よく見ると全身がそうだ。 どっと疲労が体にのし掛かる。ハイブリッドソウルで鈍くなっていた神経が再起動したのだろう。 飛白はにやっと笑ってみせる。 「なんだよ。大した術じゃねぇな、やっぱ。」 疲労や痛みが心地良く思えた。反動のように充実感が生まれる。気持ちが良い。 「俺がやらなきゃ始まらねぇ。そうだよな、黛?」 黛は苦々しい顔をした。 「何の冗談だ…?!」 「冗談なら笑えよ黛。」 「ハイブリッドソウル無しで俺に勝てるとでも…!」 「やりあえば分かるぜ。」 「脳髄の奥から不快だぞ…!」 言葉に棘しか無くなっている黛に飛白は苦笑した。 「奇遇だな黛。俺は腹の底から愉快だぜ。」 黛が駆け出した。憤怒の絶頂だ。 飛白は後ろに飛び抜き、戦い始めの時に放り捨てた鞘を回収する。 黛は縮地で距離を縮め飛白に襲い掛かる。 「藤帷子!」 格子状に連なる斬撃を飛白は隈無く見極める。
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