8.ジャスト・ムーブ

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「はっはぁ!盛り上がりの所申し訳無い!」 無遠慮な口上と共に二つの影が躍り出た。アマデオとスヴェイン。前者は満身創痍だ。 「あぁ?てめぇら何で此処に…」 「詰問は後に!アァァルスゥゥゥ!」 アマデオが高らかに呼ぶと、上空から空中形態のスレイプニルに乗ったアルスが舞い降りた。 「お三方!此方へ!」 「じゃかぁしい!アマデオ、スヴェイン!こいつはどういう…」 「いいから乗れ。俺も不服だよ。」 不機嫌なスヴェインが飛白を引っ張り、アマデオと共にスレイプニルに乗り込んだ。 「待て貴様等!」 黛が逃がすまいと動くが、アマデオがアルスに指示してスレイプニルを浮上させる。 「アマデオ!スヴェイン!」 「悪いねぇ黛!一騎打ちが御所望なら然るべき時に!ちゃんとプロデュースはやらせてもらうよ!」 アマデオは肉体のダメージを感じさせない饒舌を披露している間にスレイプニルは追撃不可能な位置にまで浮上してしまった。 黛は歯噛みしながら、スレイプニルに乗っている飛白を睨む。 飛白も不服そうな顔で黛を睨んでいた。 飛白が離れていく。もう手は届かない。一定の高度まで上がったスレイプニルは急加速して視界から消えた。 飛白と対峙する事で発生していた濃密な闘気は消えていた。微かな名残が漂うだけで、何も無い。飛白はいない。黛が独り残されているだけ。刀を振るう意義も相手もいない。 ポツンと残された自分が何だか惨めだと、黛は思った。
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