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「黛!」
続いて飛び込んで来たのは梓子だ。必死な様子だ。
「黛、指令が…」
「飛白がアマデオ達と逃げた。他の部隊に通達して囲め。」
「ちょっ…」
梓子を遮って黛は淡々と指示を出す。目は梓子に向けていない。虚空を見ている。
「奴らは空中だ。アルフレッドに捕らえさせろ。エドガーやゼルクレスがいれば囲むのは容易い筈だ。俺も随行する。飛白の相手は俺がやる。やらねばならない。奴だけは俺が」
「黛!」
梓子が黛の肩を掴んで自身へ向かせた。
「停戦命令が出たんだ!もう終いだよ!」
「あぁ…?」
黛は目を丸くした。初めて感情が差した。
「終わっただと?」
「クローズドホームが爆破されたんだよ。もう滅茶苦茶さね。おまけにフリスがヲリエとやり合って負傷したんだ。」
「…そんな事でか。」
「え?」
黛の口調が露骨に変化する。
「そんな事で止めたのか。」
「NOISEが飛び込んできてもうしっちゃかめっちゃかさ。退き際じゃないかぃ?」
「敵を殲滅する以外に終わる道理があるか?戦だぞ、これは!」
「どうしたってんだい?アンタらしくない…。」
怪訝な顔をする梓子を振り払い、黛は憤然とした面持ちで背を向けた。
「負けじゃないか、これでは…。負けだ。負けだ!」
恨み節のように、黛は呟く。
「恨むぞ…レイル!」
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