9.君と

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停戦から一時間後。 保健室。 「全く…毎年アンタらは戦争をやりたがるんだねぇ。尻拭いやるのが誰か分かってんのかい?」 保健室に併設されている緊急治療室でペネロペはボヤいた。流石にこの中では煙草は吸っていないが欲求は止められないのだろう、噛み煙草を仕切りに噛んでいる。 点滴から心電図、人工透析まで揃っている緊急治療室のベッドにはヲリエが横たえられていた。頭、体、腕のあちこちに包帯が巻かれている。彼女は眠っている。生気はあった。 ヲリエを取り囲むように、NOISEの面々が立っていた。 「チーフ…。」 シェリルは痛ましそうな目で手を伸ばした。 「これ以上の治癒は止めな。」 ペネロペが口の中の噛み煙草をゴミ箱に吐いた。 「私が充分にアメイジンググレイスで回復させた。後は医学的ケアと本人の自己回復に任せるんだ。治癒魔法は外的な治癒だから形しか直せない。回復に体が追い付かなくなるんだ。」 「でも…!」 「ありがとう、シェリル。でももういい。後はヲリエに任せよう。」 シルトがシェリルの肩に手を置いた。温かい。シェリルの緊張した心が解れる。 「容態はどうなんすか?」 ジャクリーンがペネロペを見た。冷静な口調だが澄んでいない。 ペネロペは肩を竦めた。 「アンタらのショックより軽いよ。流石四之宮ヲリエ。魔力による肉体強化が良く出来ている。外傷は右肩と肋骨二本の骨折のみ。ちゃんと頭も守っていたから致命的な外傷は無い。 けど中身がね。肺胞が何個か潰れているし、一部の内臓から出血もしている。処置はしたし、今は安定しているけどこいつは油断出来ないね。 命に別条は無いが全治二ヶ月は見よう。ま、存外軽いし、本人の気力次第じゃ早まるかもだけどさ。」
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