9.君と

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「ありがと。」 ヲリエは無邪気な笑顔で云った。いつものヲリエだ。体の状態など関係無い、溌剌としたあどけない笑顔。 リントはあれだけ矢継ぎ早に言葉を紡いでいた口を半開きのまま止めていた。いきなり通行人が現れたのに驚いた野良猫のように、目をパチパチさせて黙った。 そして不意にリントは立ち上がり、髪をせわしなく掻きながら背中を向けた。 「…今日一連の騒動を纏める。編集会議だ。全員編集室に集合。」 早口でリントは指示を出した。 「俺が仕切ります。いいっすね?シルトさん。」 「サポートするよ。」 シルトが頷いたのを合図に、エンとジャクリーンが出口へ向かった。 「編集会議って…。」 ラウルが困惑した顔をする。リントはジロリとラウルを見据えた。 「そこの雌ゴリラに看護が必要か?無駄な時間を少しは有効に使え。」 「僕達は僕達のすべき事をしようって事だよ。」 リントのぶっきらぼうな云い方をシルトが柔らかくフォローする。 それでも腰が上がらないシオ達一年生を見回し、ヲリエは苦笑混じりでペネロペに尋ねた。 「ペネロペさん。あたしは入院かな?」 「三日くらいは安静にしてな。そっから先はご自由に。」 「分かった。ラウル、シェリル。そういう事だから、先に行って。リント。シオだけ貸してもらって良い?」 「良いっすよ。」 リントはそれだけ云って、エンとジャクリーンを連れ立って部屋から出て行った。ラウルとシェリルはシルトに諭され、名残惜しげに緊急治療室から去った。
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