9.君と

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「シオの中にいる誰かは、シオ自身かもしれないよ。」 シオは目を見開く。 「自分の知らない事を知っているシオかもしれない。」 「でも、これは他人の記憶だし…明らかに誰かがいるんです。一人じゃない、沢山の人が!」 「えーっとね、何て云ったらいいのかなぁ…。」 ヲリエは腕を組む素振りをした。片腕が動かせないので振りだけだ。 「あからさまに他人でも、それはシオなんだよ。」 「…わかんないです。」 素直に云ってシオは肩を落とした。 「未来の自分を想像してごらん。」 ヲリエは温かく語る。 「たとえシオの中の誰かが悪意を持った奴でも、いつかはどうにかして自分の一部にしてしまう訳でしょ?全く知らない、赤の他人の記憶でも自分の中にいれなきゃいけない。そうした時、イヤでもそれはシオの一部になる。 もしそうなったら、シオはどうする?」 「どうするって…。」 シオは即答出来ない。全くイメージしていない未来だった。 「シオはシオのままだから、どうにも出来ないよ。記憶そのものがイヤでも背中を向けられない。だったら、やれる事は一つだけ。」 その一つは? シオは目で尋ねた。 「受け入れる。」 重い響きがあった。 「自分のものにしてしまうの。」 「人のものでも?」 「いつかは、自分のものになる。いや、そうしなきゃいけない。」
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