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「シオの中にいる誰かは、シオ自身かもしれないよ。」
シオは目を見開く。
「自分の知らない事を知っているシオかもしれない。」
「でも、これは他人の記憶だし…明らかに誰かがいるんです。一人じゃない、沢山の人が!」
「えーっとね、何て云ったらいいのかなぁ…。」
ヲリエは腕を組む素振りをした。片腕が動かせないので振りだけだ。
「あからさまに他人でも、それはシオなんだよ。」
「…わかんないです。」
素直に云ってシオは肩を落とした。
「未来の自分を想像してごらん。」
ヲリエは温かく語る。
「たとえシオの中の誰かが悪意を持った奴でも、いつかはどうにかして自分の一部にしてしまう訳でしょ?全く知らない、赤の他人の記憶でも自分の中にいれなきゃいけない。そうした時、イヤでもそれはシオの一部になる。
もしそうなったら、シオはどうする?」
「どうするって…。」
シオは即答出来ない。全くイメージしていない未来だった。
「シオはシオのままだから、どうにも出来ないよ。記憶そのものがイヤでも背中を向けられない。だったら、やれる事は一つだけ。」
その一つは?
シオは目で尋ねた。
「受け入れる。」
重い響きがあった。
「自分のものにしてしまうの。」
「人のものでも?」
「いつかは、自分のものになる。いや、そうしなきゃいけない。」
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