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シオは口を閉じ、目を細めた。その表情にヲリエは笑う。
「そんな難しく考えなくていいよ。堅く構えると見逃してしまう事があるから。柔らかく柔らかく!尚且つ直向きにね。」
シオは頷いた。
まだ現実感を持ちきれていないが、その言葉に導を見いだせた気がする。
「頑張って…は無責任だから云いたくないけど。シオの事だからね。シオ以外にはどうにも出来ない。」
「はい。」
「無理しないで、優しく厳しく自分と向き合えばいい。意外と自分の事って知らないから驚く事もあるかもしれない。でもそれも自分だって、分かれば良い。それだけで何かが変わるから。」
「はい。」
「素直だなぁ、シオは。」
ヲリエは笑った。シオもつられて笑う。
「あんまり鵜呑みにされても責任取れないよ。」
「え…あ…。」
ヲリエに忠告を受けてシオは戸惑う。期待通りの反応にヲリエは愉快そうだ。
「出会った頃のシオに戻ったみたい。子犬みたいに鼻をヒクヒクさせて何でもかんでも、気の向くままに嗅ぎ回る。バカ正直で、純粋で…」
「ダメ、ですか?」
ヲリエは大きく頭を振った。
「全然!寧ろ今の君が、一番君らしい。好きだよ。」
シオは頬を赤らめた。色恋沙汰を知る性格では無いが、むず痒い響きに心は敏感だった。
「たまに、羨ましいな。」
「え?」
意外な言葉だった。ヲリエがシオをそう思うとは。
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