2.再会と遭遇

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小柄で華奢な体つきは幼さを漂わせていたが、立ち振る舞いは大人びている。首筋にかかるくらいの藍色のショートヘアーは簡素だがきちんと整えられている。流している前髪の下には小動物のような大きな目、空色の瞳が緊張で強張っていた。愛らしい目つきをしているが、鋭く流れる眉がどこか取っ付きづらい印象を与える。白磁のような白い肌に薄い桃色の唇が形良く付いており、愛らしさに花を添えていた。 夏仕様の制服を着こなしている姿はなかなか様になっている。背中にナップザックを背負い、手には杖を握っている。杖は独特の装飾が施されている。柄自体は銀色のシンプルなモノだが、先端には水晶のような珠に螺旋状の飾りが施されている。中に水が入っているのだろうか、透けた球の中で水が流れているように見える。不思議な雰囲気を持つ杖だった。 だがそれらがクラスの面々を唖然とさせた訳じゃない。それら各々では無く、全体的な印象に彼らは唖然としていたのだ。 髪、瞳の色。 体型。 武器。 佇まい。 外見の特徴それぞれが重なり合って生まれるイメージは皆同じだ。 シオ。 教卓の前、カークスの隣に立つ少女は顔立ちは違えど、彼女が持ち合わせている雰囲気はシオの持つそれと瓜二つだった。 あまりに綺麗に重なるものだから皆呆気に取られていたのだ。 そしてシオ自身もそうだった。自分の持つ雰囲気や佇まいを彼自身が把握する術は無いが、彼女の特異さはシオにも伝わっていた。シオは言葉を失い、目を丸くしていた。 「えー…彼女のぉ、名前ぇ、はぁ…」 カークスは電子ボードにつらつらと名前を書いた。 「アイン・アイリス。あー、んじゃー、あいさぁ、つぅーして…。」 カークスに云われ、アイン・アイリスは一息吐いて一歩進み出た。 入ってきてからずっと教室の奥の壁を見ていたアインはまだ強張っている瞳で教室を見渡し、ゆっくり口を開いた。
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