2.再会と遭遇

10/35

61人が本棚に入れています
本棚に追加
/804ページ
「アイン・アイリスです。よろしく。」 外見のわりにやや低い声で、アインは挨拶した。 その挨拶で漸く我に返ったクラスの生徒達は歓声を上げて手を叩いた。アインは沸き立つ歓声に顔色一つ変えず、ただ教室中を見渡した。そして一人の人物に目を止める。 目を止められたのはシオだった。 自分と同じ空色の瞳を向けられ、シオは首を傾げた。偶然や興味の眼差しじゃない。強い意志を持って、意図的にシオを見ている。 彼女とは無論初対面であるシオは戸惑った。アインの目はシオをシオだと認識している。見つめている時間も長い。心当たりの無いシオは益々惑った。 代わりに頭の中がざわめいた。あの記憶の持ち主か、中にいる大勢の人間かどうかは定かじゃない。だが普段より、夏休みの間より、大きくざわめいている。シオは胸のシャツを掴み、ざわめきを抑圧しようと試みた。アインの影響だろう。 シオは混乱する。 確かに外見は似通っているが、だからと云ってざわめく要因になるだろうか。原因を思索すると、一つの答えが浮き彫りになる。 もしかしたら。 もしかしたら、彼女も人では無いのだろうか。 仮説だが、シオには妙な確信だった。 「はーい、はーい…。とりあーえず、アインは…左ぃの、一番後ろぉの、席に…。」 シオが顔を上げたと同時にカークスが云った。アインは黙って頷き、席に向かった。左の列にはシオの席がある。 シオはアインが近付いてくるのを緊張しながら待ち構えていた。歩いている間、アインはシオを見る事は無かったが、すれ違いざまに横目でシオを見た。 涼やかな流し目は、それだけで射竦める程の力が込められていた。 アインが着席したタイミングでカークスは手を叩いた。 「ん、じゃーホーム…ルームは、終わ、りで~…。次は実戦演習かぁー。んじゃー体、操、服に着替…えて、ドラゴンキャッスルの…第一闘技場にぃ…集合~。ドルベラットー…先生~によるとぉ、今日は…CQCの練習ー、らしいぃのでぇえ、頑張っ…てねぇ。」
/804ページ

最初のコメントを投稿しよう!

61人が本棚に入れています
本棚に追加