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ふとシオの視界にアインとエリスが入った。
カークスに云われた通りに、アインに色々手解きしているようだ。エリスは持ち前の人当たりの良さでアインに接しているが、アインは起伏の少ないリアクションで返している。
「なぁ、シオ。」
交代し、リクが長座体前屈を始める。
「何?」
「あのアインって子…気になるのか?」
シオはハッとする。体を伸ばすリクの背中を押す手が一瞬放れた。
「…どうして。」
「今、ずっと見てたぜ。…気持ちは分かるけどな。」
リクは聞きづらそうだった。シオのルーツが分からない事はリクも知っている。迂闊にシオの核心に触れるのは躊躇われた。
「同じ国の出身とかじゃないか?訊いてみたらどうだ?」
「…いい。」
シオは静かに拒んだ。アインに対して興味が沸いているが、今は漸く収まったざわめきが蘇るかもしれない。また喧しくされるのは嫌だった。
「いいのか?」
リクはゆっくり体を起こす。尋ねる声は、心配そうだ。
「いいんだ。」
シオははっきりと答えた。リクは体を起こしきり、深く息を吐いた。
「なんか意外だな。」
「え?」
「好奇心丸出しで人に関わっていくのがシオ、ってイメージだったから。」
シオは停止した。リクの声が切なげだったからだ。途端に後ろめたさに似た感情が背筋を撫でる。
シオは沈んだ。
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