2.再会と遭遇

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「シオ?どうした?」 リクが振り返った時にシオの停止は解除された。シオの顔を心配そうにリクが覗いている。 「何でも無い。」 ふるふると首を振り、シオは立ち上がって次のストレッチにかかろうとする。だが、リクがシオの肩を掴んで止めた。 「お前…何かおかしいぞ。」 リクの懸念は当たっていた。先程教室で見せたシオの陽気さはもう無くなっている。やはりあれは表面的なモノだった。陽気さが剥がれた下には晴れない鬱屈があった。 「夏休み中何かあったんだろ?話してみろよ。」 「いいよ、リクには…」 関係無い、と云いかけてシオは口を噤んだ。リクの目がその台詞を許さないと感じたからだ。 シオは追い込まれた心地だった。しかし追い込まれても話す気にはならない。自分の中の誰かに気を許せば止め処なくなる気がした。 シオがぎこちなく目を反らすのを見て、リクは悟った。シオは本気で話したがっていない。問い詰める気にはならなかった。あくまでシオの問題だ。シオが承認しなければ立ち寄る事は許されない。どれだけシオを思いやっていても破ってはならないルールだ。 リクは切なくなったが、「そっか…分かった」とだけ云って話を切り上げた。肩から手を放し、ストレッチにかかる。 しかしまた別の感慨が湧く。シオが壁を作って来た事への物悲しさ。距離が出来た事が分かっても壁を作られた以上迂闊に近寄れない。 侘びしさが募ってきたリクは紛らわすように、黙々とストレッチを続けた。 「あ…ちょっと、アイン!」 一際大きなエリスの声にシオが顔を上げると件のアインがシオとリクの元に近付いてきた。硬直するシオに気付いて、リクもアインの方を向く。 アインはシオとリクの前に立った。口を真一文字に結び、鋭い眼差しを向けてくる。
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