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「お…何?」
目を丸くして固まるシオの代わりにリクが云った。アインはリクに目もくれずシオを見据えた。
「シオ・クォール?」
無愛想にアインが尋ねた。シオは舌が上手く回らず、ただ頷く。
「会いたかった。」
唐突な云い草にシオは呆気に取られた。
アインの表情は変わらず真っ直ぐだ。早くシオの答えが聴きたいと無言でプレッシャーを掛けてきているように。
シオは何か返さなければと焦るが、アインの言葉で混乱に拍車が掛かる。其処にアインのプレッシャーが入ってシオはまた別の形で追い詰められる。
「君の事を教えて。知りたいの。」
アインの申し出にシオは口をパクパクさせて後退する。アインは一歩踏み込む。シオが一歩退くと、またアインは一歩踏み込む。
「お、おい…。」
シオが明らかに引いている様を見かねてリクが間に入った。アインは敵意を込めてリクを睨み上げた。
「邪魔しないで。」
毅然とアインは云い放つ。彼女の剣幕にリクも後ずさる。
「そんな邪険にすんなよ…。」
「私はシオに話があるの。」
アインが向き直ると其処にシオの姿は無かった。よく見るとシオが近くにいたシャーロックの背中に隠れていた。訳が分からないシャーロックが戸惑うのをよそにシオはシャーロックの背中から怯えた目でアインを眺めている。
「あっ…!もう!邪魔して!」
「そんな怒るなよ…!」
リクに怒りを飛ばして、アインはシオの元に向かおうとする。
「こらぁ!何やってんだぁ!」
アインの足をドルベラットの怒鳴り声が止めた。
「遊んでんなよぉ!ちゃんとやらねぇと落第だかなんな!」
ドルベラットが怒り心頭な様を見てアインは渋々引き下がった。悔しげにシオを見ながら不安げに見ているエリスの元へ行く。
「…何、あの娘。」
シオはシャーロックの背中に捕まったままアインを見送った。
一気に距離を縮めてきたアインの顔は強烈な印象をシオに残した。間近に顔を接近させてきたアインに、シオは心の壁を突き崩された気がした。
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